私もいじめられる理由の1つでした
ある日、私がステイ先に戻るとホストシスターが泣きじゃくっていました。
彼女はプライマリースクール、小学校に通っていました。名前を仮にJとします。
Jは活発で、演技が上手く、いつも私を笑わせてくれる、素直で優しい子です。
私は彼女と過ごす時間が1番長かったのではないでしょうか。
そんな元気ハツラツとした子が涙を流しているという事態に私は戸惑いながらも、彼女を抱きしめました。
何があったのか聞いても答えてはくれません。ただ、私はJの頭を撫でることしかできませんでした。
夕飯の席で、Jは彼女の母つまり私のホストマザーに訴えました。
「これ以上、学生をとるのはやめて!」
話を聴くと、どうやら学校でいじめを受けたらしいのです。
彼女の通う学校はインド人が多く在籍しているので、ナショナリティが原因になることはありません。ただ、あまりに多くの人間を受け入れたことで貧乏だとからかわれてしまったらしいのです。
ホストマザーは生活のために必要なこと、人助けをするのはいいことなのだと説得しましたが、他にもエピソードは出てきます。
セール品を買うのは貧しいからだ、とか。そういう類のものです。
それでも、最も陰口をたたかれた内容はやはりホームステイのことだったようです。
私はどうしようもできなくて、ただただ謝りました。加害意識が湧いてきました。
実は何度か彼女の友人と会ったことがあるのです。
「あなたはいてもいい。特別だから」
なぜか私に懐いていたJはハグを求めてきました。
贔屓目に見ずとも可愛い顔立ちの彼女が、こんなにも苦しげな表情をするなんて、とすごく辛くなったのを覚えています。
短期間で繰り返される出会いと別れに小さな子どもが慣れるわけがなかったんです。ちょっと他の人より長くいる私と深い関係を築こうとしてくれている彼女がよりいっそう愛おしく感じました。
なので、私はJに昔話をしました。
私がいじめられていた時のことです。
私も彼女と同じ年の頃にやっかいな目にあっていました。それでも、中学校、高校と進学していくにつれて、何でも受け入れてくれる友人ができたのです。
これは私が勉強をする理由の1つなのですが、私といじめっ子の進学先が必ず一緒にならないレベルにまでもっていくという手段をとったのです。今や完全に進路が重なることはないでしょう。そもそも、私は普通の環境では働けませんし。
私はこう語った上で、彼女に言いました。
「みんな、Jが美人だから羨んでるのよ」
おそらく本当のことです。彼女は少し笑ってくれました。
それから、私は彼女ともっと仲良くなりました。
「学校はどうだった?」
「昨日よりはマシだったわ」
こんなたわいも無い会話をしながらも、その時は忍び寄ってきていたのです。