灰汁という概念
前回に引き続き、インド人の家で体験した出来事です。
その日、ホストマザーはスープを作っていました。
彼女たちはベジタリアンなので野菜スープを煮込んでいたのです。
しかし、私には気になることがありました。
灰汁の処理です。
使われている野菜からはたくさんの灰汁が出ています。
苦味やえぐみのために取り除くことが一般的だと思います。
少なくとも大量の灰汁を放っておこうという気にはならないのではないでしょうか。
全部をすくい上げるわけではないにしても、軽く減らす作業くらいならすることが多いような気がします。
鍋から溢れんばかりの灰汁を見て、さすがにこれを食べるのは…… となんとも形容しがたい感情に襲われて、ついに尋ねてしまいました。
「灰汁とらないの?」
灰汁は辞書で調べたのですが、いまいち伝わりませんでした。
そこで、鍋の中を指差して、
「この苦いのとらないの?」
と聞き直しました。
面倒なことになるのはわかっていましたが、後には引けなかったのです。
案の定、これはいい成分なのだと反論されてしまいました。
おそらく灰汁が苦いという感覚がないのだと思います。
そして、良薬口に苦しという風に捉えたのだと推測されます。
灰汁を取り除くのは当たり前だと思っていたけれど、実はあまり浸透していないのかもしれません。