飛行機の中の緊張
ふつうフライトといったら、機内食を摂って、映画を見て、眠るだけというイメージかもしれませんが、私にとってはそんなに簡単なものではありません。
手荷物検査の時点で心労による負担があまりに大きいのです。
デバイス、電子機器は当然のことながら洗うことができません。
そのため、不特定多数の人が使ったトレイに、それらをビニール袋越しにでも置くにはかなりの覚悟が必要です。
自分のその日の症状によってできること、できないことは変わります。
出国当日は朝から心臓がバクバクし、泣きそうでした。
そのような状況下で耐えられるはずもなく、職員の方を手間取らせてしまうこともあります。医師からの診断書持参の上で、トレイを拭いてもらったり、カバーをかけてもらったり。本当に日本の空港の方は親切で、感謝してもしたりません。
しかし、搭乗してからが本当の戦いなのです。
私には多くの不安がつきまといます。
例えば、飛行機の荷棚から私のものが落ちてきたら……
もしも、私と同じ棚を使う人の荷物が汚かったら……
妄想だけでも気が気じゃなくなって、一切の睡眠を許されない状況になるのです。
緊張状態が長い時間続き、心身ともに疲れ果ててしまいます。
本当はパスポートも触られたくないし、現地でスーツケースを受け取るのも一苦労。取手の部分を入念にウェットティッシュで拭き、手を何度も洗います。
そして、入国のための荷物検査も大変です。
何といったって、今度はスーツケースも手荷物も同じレーンを通るのですから。
拙い英語で説明して、カバーをしてもらったのを覚えています。
空港の外に出る頃にはクタクタで、これからの生活に大きな不安を覚えました。それと同時に、本当に引き返せないところまで来てしまったんだなと実感しました。
その後、私は語学学校から派遣されたスタッフさんの車で、同じ便に乗ってきた日本人とステイ先へと向かったのでした。
この時は予想もしていませんでした。これから先のことなんて、何も知らなかったのです。